2015年のドイツの粗悪語は、„Gutmensch“(「良い」+「人」)に。(1/12)
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2015年の粗悪語(Unwort)が、2016年1月12日に発表されました。
今回選ばれたのは、Gutmensch です。何のへんてつもない単語のように見えます。
なにしろ gut (「良い」) という形容詞と Mensch (「人間」)という名詞を組み合わせて作られた造語だからです。
「良い人間」がなんで粗悪語なのか、という説明は、以下の報道用資料(PDFファイル)に説明されています。
Pressemitteilung: Wahl des 25. „Unworts des Jahres“ | pressemitteilung_unwort2015_neu.pdf
この単語、2015年に無給で難民の手助けにかかわった人たちや、難民宿泊施設の攻撃を非難する人たちを罵るのに特に使われたそうです
(Als „Gutmenschen“ wurden 2015 insbesondere auch diejenigen beschimpft, die sich ehrenamtlich in der Flüchtlingshilfe engagieren oder die sich gegen Angriffe auf Flüchtlingsheime stellen. )。つまり、見かけは肯定的な意味なのにもかかわらず、使われ方は「軽蔑的」で「皮肉的」なところに大いに問題があるわけです。
実はこの語、すでに2011年に粗悪語ランキング第2位になっています (Unwörter ab 2010 | www.unwortdesjahres.net 参照)。
独和辞典にはまだ収録されていないと思いますが、Duden Deutsches Universalwörterbuch 第6版 (2007) にはすでに収録されていて、簡単な説明がついています。
Gutmensch, der (meist abwertend od. ironisch):
[naiver] Mensch, der sich in einer als unkritisch, übertrieben, nervtötend o.ä. empfundenen Weise im Sinne der Political Correctness verhält, sich für die Political Correctness einsetzt.
Aus: Duden Deutsches Universalwörterbuch (2007)
日本語には、「良人」(りょうじん)という語がありますが、普通に使われる言葉ではありません。「おひとよし」とか「おめでたい人」という表現が同じような文脈で「皮肉的」に使われることはありそうです。
なお、第2位には、ギリシャ問題に関して、ギリシャに対して盛んに使われた Hausaufgaben (「宿題」)という言葉が選ばれました。これも、言葉が粗悪というよりも、こういう使い方をする人々に問題がある気がします。第3位は、Verschwulung (「ホモ化すること」)という語。
アキフ・ピリンチ (Akif Pirinçci) の Die große Verschwulung. Manuscriptum, 2015. という著作などで、
「男たちを柔弱にすること」(Verweichlichung der Männer) という意味で使われたようですが、「同性愛者を明示的に中傷する」表現ということで粗悪語に選ばれました。
なお、UnwortBilder | www.unwort-bilder.de では、関連した写真を掲載しています。