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2022年の粗悪語は Klimaterroristen(気候テロリスト)

2022年の粗悪語に Klimaterroristen(「気候テロリスト」)が選ばれる。(2023/01/10)
Unwort des Jahres 2022 ist „Klimaterroristen“.

ドイツにおける「2022年の粗悪語」として „Klimaterroristen“(「気候テロリスト」)が選ばれました。プレス発表は、unwortdesjahres.net の広報をつとめるコンスタンツェ・シュピース教授 (Prof. Dr. Constanze Spieß) によって2023年1月10日に行われました。

その年の粗悪語 (Unwort) を選ぶというのは、「言語批判的アクション」で、「不適切で、何かを隠ぺいするような語、あるいは、誰か・何か誹謗するような公の言語使用に注意を喚起する」という趣旨で行われています。「人間の尊厳や民主主義の原理に反するのような語、社会的な特定のグループを差別したり、婉曲的で、偽装し、人をまどわすような言語表現」が選び出されます。

以下では、Aktuelles – Unwort des Jahres に上げてある Pressemitteilung_Unwort_2022_Januar_2023_Version_final.pdf にもとづいて話をすすめます。

今年の粗悪語 Klimaterroristen(気候テロリスト) は、Klimaschutz(気候保全)のために活動するある種の人々を指す言葉です。日本では、「環境保護」という言葉が広く使われていますが、ドイツ語では地球規模の環境保護をKlimaschutz(気候保全)と呼びます。一位に選ばれたKlimaterroristen(気候テロリスト)という表現は、「活動家たちをテロリストたちと同等に置く」もので「それによって環境活動家たちを犯罪者と見なし、中傷することになる」からだとの説明がなされています、さらに、この表現を使うことで、議論の焦点を「正当な内容的な要求から、抗議運動をする人たちの扱い方へ移してしまう」ことができてしまいます。例えば、テロリストだから予防的に拘束してしまえ、という発想もおきるかもしれません。恒例となっている「粗悪語のイメージ」は、Unwort Bilder | www.unwort-bilder.de で公開されています。

なお、今回の粗悪語の対象となってしまった環境活動家の人たちは、Letzte Generation(最終世代)と呼ばれていて、2021年の「最終世代のハンガーストライキ」(Hungerstreik der letzten Generation) で知られるようになりました。(出典:Letzte Generation| de.wikipedia.org 最終世代の活動家たちのホームページは、Letzte Generation 🧡 – Lasst uns Klartext reden! です。

第2位に挙げられたのは、„Sozialtourismus“(社会的ツーリズム)です。「ツーリズム」というと「観光事業」、あるいは「観光旅行」そのものを指します。この言葉は、実はすでに2013年に粗悪語に入れられていました。今回再登場した背景は、CDU総裁のフリードリヒ・メルツ(Friedrich Merz)が2022年9月にこの言葉を使ったからです。メルツ氏は、ウクライナからの戦争難民がドイツに入ってきて保護を求めた状況を見て、この言葉を使い、その後謝罪しています。詳細は、Geflüchtete aus der Ukraine: Merz beklagt “Sozialtourismus” | tagesschau.de をご覧ください。「観光旅行」は「楽しみや休養を得るために自由意思で行う旅行という活動」であり、保護を求めてやってくる難民とはまったく異なります。難民が持つ正当な権利を覆い隠してしまいます。

第3位にランクインしたのは、„defensive Architektur“(防衛的アーキテクチャー、防衛的建築様式)です。これは、英語にもある (defensive/hostile urban architecture) の翻訳であるとされていますが、ドイツ語では、「居住地を持たない人を締め出す建築様式」(Anti-Obdachalosen-Architektur) の意味で使われるようです。例として挙げられるのは、公の場所にあるベンチです。この頃、公園のベンチは「座り心地が悪い」という話を耳にします。例えば、Warum Thüringens Innenstädte unbequemer geworden sind | MDR.DE のような記事に紹介されています。たとえば、Parkbänke defensive Architektur をもとに画像検索してみればわかります。これでは、ベンチで一休みすることすらできません。「居住地を持たない人を締め出す様式」は、日本でも導入されていますね。この「防衛的アーキテクチャー」という言葉は、戦争用語である「防衛的」を使って何かを守るかのような言い方をしていますが、実際には人を締め出すために用いられている婉曲表現です。「社会の周辺に追いやられてしまっている人たちを狙って、彼らを社会から追い出そうと」しています。

2022年の粗悪語の審査員に加わったペーター・ヴィットカンプ氏(Peter Wittkamp) は、“militärische Spezialoperation”(軍事特殊作戦)を粗悪語に挙げています。クレムリンは攻撃的な戦争行為を行っているにもかかわらず「軍事特殊作戦」と呼ぶことで、全世界、自国の国民をも欺いている、という理由です。

j.o.

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