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2023年6月30日に「ウィーン新聞」が日刊「紙」ではなくなった。

2023年6月30日に「ウィーン新聞」が日刊「紙」ではなくなった。
Am 30. Juni 2023 hat sich Wiener Zeitung von der gedruckten Tageszeitung verabschiedet.

1703年8月8日に創刊された「ウィーン新聞」(Wiener Zeitung) が、2023年6月30日に最後の日刊紙を発行して紙の新聞の発行を停止しました。東京新聞(2023年7月3日朝刊)には、「『世界最古の日刊紙』終幕 ウィーン 320年、伝えた『11万6840日』」(ベルリン=時事)が掲載されています。

同記事によると

「最後の一面には「十一万六千八百四十日」とパプスブルク家治世から発行を続けた日数を大きく記し、歴史の記録者としての自負を示した。」

と書かれています。

「ウィーン新聞」は紙の新聞ではなくネットメディアに移行するとの内容が記事には書かれていたので、早速アクセスしてみました。

Wiener Zeitung からアクセスできます。編集部からのメッセージは、Die Wiener Zeitung stirbt nicht, sie lebt online weiter | Wiener Zeitung から読むことができ、そこには気になる質問とその答えが書かれています。社説(Editorial) は、カタリーナ・シュミット(Katharina Schmidt)氏による「質の高いジャーナリズムは紙なくしても可能」(Editorial: Qualitätsjournalismus geht auch ohne Papier)が掲載されています。

これからも「ウィーン新聞」(Wiener Zeitung)と名乗るのか?(Heißt ihr noch Wiener Zeitung?)という質問には、「はいでもありいいえでもある」(Ja und nein.)と答えています。メディアグループとしての Wiener Zeitung の一部ではあるが、これからはネットメディアで WZ と名乗るのだそうです。

上記の【ベルリン=時事】の記事では「新たな編集体制では批判的な報道姿勢がなくなると危惧されている。」と書かれていますが、この点に関して編集部からのメッセージは、独立性を守ったジャーナリズム(unabhängiger Journalismus)を貫くと宣言しています。

ただし、これまでと同じ紙面づくりはしないと宣言もしていて、スポーツ、天気情報、テレビ・ラジオ・プログラム情報(Programmtipps)はなくなり、日々のアクチュアルな情報を追いかけるような記事は、意味をなさなくなるとか。その代り、各記事には「情報と出典」(Infos und Quellen)が付属し、そこから、特定の記事に関する詳細な情報がえられるとのこと。さらに、Podcast „Weiter gedacht – der Podcast der WZ も用意されています。

試しに、002 – Spaß an der Oper (29’05”) というPodcast を聞いてみました。 WZの記者ペートラ・テムパー (Petra Tempfer)氏がエドヴィン・バウムガルトナー(Edwin Baumgartner )氏にインタビューしているもので、
Infos und Quellen: L`Orfeo: Einstieg in die Oper und wie Klassik Spaß macht | Wiener Zeitung
からアクセスできます。Infos und Quellen をクリックすると、関連する詳細な情報もでてくるので、これまでの新聞よりも情報源に関して詳細な情報を提供してくれています。モーツァルトの Zauberflöte の初演は、Wiener Zeitung には掲載されなかった、なんていうエピソードも紹介されていました。

紙の新聞がなくなるというのは、一つの時代の流れなのでしょう。でも、WZ が今、ネット上でチャレンジしようとしていることは、一つの今後のジャーナリズムのあり方を考えさせるもののような気がします。

j.o.

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