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2023年のドイツの粗悪語 (Unwort) は、„Remigration“ に。(2024/1/15発表)

2023年のドイツの粗悪語 (Unwort) は、„Remigration“ に。(2024/1/15発表)
„Remigration“ ist zum Unwort des Jahres gewählt worden.

Emigration は「(国外への)移民」や「亡命」という意味で用いられます。「(国外からの)移住」には Immigration という語もあります。今回登場した「粗悪語」(Unwort) は、Remigration です。

2024年1月15日に unwortdesjahres.net のプレス発表 Pressemitteilung: Wahl des 33. „Unwort des Jahres“: Unwort des Jahres 2023 (PDF) で「2023年の粗悪語」が明らかにされました。なお、恒例になっているイメージ写真(Unwort-Bilder) は、Unwort Bilder: Remigration を参照してください。

このプレス発表で説明されていることを以下ではかいつまんで紹介します(適当に逸脱していますのでご注意)。

Remigration という表現は、ラテン語の動詞 remigrare (‚zurückwandern, zurückkehren‘) から派生された外来語として存在していました。審査委員会が批判したのは、この語 Remigration を「右翼の闘争概念」(rechter Kompfbegriff)として、もともと使われていた意味とは違う意味で使ったことです。この移民・亡命研究から生まれた概念は、さまざまな、特にさまざまな自由意思に基づく帰還の形式を含んでいたにもかかわらず、それを無視して「非人道的な排除・排斥」の意味で政治の場面で意識的に<意味を捻じ曲げて>使われたことにあります。

北ドイツ放送 (NDR) の解説 (“Remigration” ist Unwort des Jahres 2023 |NDR, Stand: 15.01.2024 09:52 Uhr にもあるように、この Remigration という語は、「アイデンティタリアン運動(Identitäre Bewegung)」の中で、右派から極右の人たちによって使われた婉曲語法 (Euphemismus) であるとも言えます。その意味するところは、「強制帰還」(Zwangsausweisung)「集団国外追放」(Massendeportation) であると言えます。

「アイデンティタリアン運動(Identitäre Bewegung)」とは、ドイツ語の Wikipedia の解説によれば (Identitäre Bewegung | de.wikipedia.org )省略してIBとも呼ばれ、民族的なグループ化を主張し、自らを「民族的多元主義」の中に位置づけるとする運動です。しかし実際には、「閉じられた民族的に均一な『ヨーロッパ文化』を前提としている」(„Sie gehen von einer geschlossenen, ethnisch homogenen „europäischen Kultur“ aus, …“) ようです。

今年のゲスト審査員であるループレヒト・ポーレンツ (Ruprecht Polenz) によれば、この語は「AfD の 民族主義的な国粋主義者たちによって、彼らの本当の意図を覆い隠すために用いられた」(„von den völkischen Nationalisten der AfD benutzt, um ihre wahren Absichten zu verschleiern“) そうです。

さて、第2位に選ばれたのは、Sozialklimbim です。Klimbim とは、「くだらないもの」とか「ばかばかしい大騒ぎ」という意味の擬音です。sozial と組み合わせることで、収入や資産の少ない人々を誹謗する意味合いで使われました。社会的弱者を公的な支援で救おうという議論の中で登場した差別語だと思われます。

第 3位は Heizungs-Stasi は「暖房シュタージ(東独の国家秘密警察)」でした。この語は、気候変動対策に反対するポピュリスト的な世論操作 (Stimmungsmache) に使われました。さまざまな気候変動対策が提案されて実行されようとしている中で、それらの対策が「独裁的な抑止策」(diktatorische Repressionen) であるかのように印象づけられました。

よく考えると、日本にも粗悪語があふれているような気がしますが、みなさんはそう感じませんか?

j.o.

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