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2024年のドイツの粗悪語 (Unwort) は、„biodeutsch“ に。(2025/1/13発表)

2024年のドイツの粗悪語 (Unwort) は、„biodeutsch“ になりました。(2025/1/13発表)
Zum Unwort des Jahres 2024 ist „biodeutsch“ gewählt worden.

biodeutsch: bio- はギリシャ語由来の接頭辞で、「生命・生涯など」や「自然・有機を」を意味したりすることで知られています。deutsch は、「ドイツの、ドイツ人の」という形容詞です。この2つを結びつけると、「生命」+「ドイツ語の」とか「生」+「ドイツ人の」とかを想像してしまいます。実は、2023年に発売された Duden Universalwörterbuch, 第10版には以下のように載っています。

biodeutsch <Adjektiv> (meist ironisch abwertend):
deutscher Abstammung und in Deutschland lebend:
Quelle: Duden Universalwörterbuch, 10. Auflage, (2023)

「(たいていは皮肉 軽蔑的)ドイツ由来で、ドイツに住んでいる」(筆者和訳)

Unwort des Jahres 2024 | unwortdesjahres.net に詳細の説明がありますが、ここでは、この皮肉を込めた使い方ではない用法が、粗悪語に選ばれています。以下では、適当に簡略化して説明します。

biodeutsch という表現は、2024年「とりわけソーシャルメディアで多く用いられた、それは、誤って生物学的であると考えられた血統基準の背景で人間を分類し、評価し差別するために用いられたものだ。」(Der Ausdruck biodeutsch wurde im Jahr 2024 … insbesondere in den Sozialen Medien verstärkt verwendet, um Menschen vor dem Hintergrund vermeintlich biologischer Abstammungskriterien ein-zuteilen, zu bewerten und zu diskriminieren. ) つまり、どうやら「生物学的にドイツ人を定義ができるかのような誤った印象を与えてしまう」表現で、移民の背景を持つドイツ人と「純粋な??ドイツ人」を区別する意味で・意図で用いられたようなのです。

「もともと、風刺的な表現として皮肉的に用いられていた、(商品の)品質保証スタンプとしてビオ・スタンプでエコロジカルに栽培されたものにつけられていたものだが、biodeutsch という語は、数年前からちゃんと考えることなしに、非風刺的に、 つまり字義通りの意味の用法で使われるようになった」そうで、これは、「人間は法の前で平等である」という民主主義の原則に反し、人間を差別し、人種差別につながります

さて、第2位に選ばれたのは、Heizungsverbot(暖房装置禁止)でした。この語を見たら、「暖房」や「暖房装置」が禁止されたのか、と思ってしまいますが、そうではありません。2024年1月1日から施行された「改正建築物エネルギー法」(Gebäudeenergiegesetz (GEG) | BMWSB) のことを<いいかげんに>こう呼んでしまったようです。この法律改正は、化石燃料を使う暖房装置を新たに建物に取り付けることを禁じたもので、「環境を汚染しない再生可能エネルギーを少なくとも65%使う暖房装置にしなければならない」(… es werden stattdessen alternative Heizungssysteme gefordert, die umweltschonendere, zu mindestens 65% erneuerbare Energien verwerten.)というものです。

日本でも「除染土」というのがありましたが、あれは「(人体に有害なレベルの放射性核種を取り除くために取り)除(いた汚)染(された)土」のことでした。省略表現は、その実態を表すようなものにしなければなりません。

今回の審査員には、ゲストとして政治学者サバヌール・チーマ(Saba-Nur Cheema)と社会科学者メロン・メンデル(Meron Mendel)が参加していましたが、その2人が選んだものは、importierter Antisemitismus(輸入された反ユダヤ主義)でした。
右寄りの人たちの中で用いられ、イスラム系の移民を排除するために利用されたようです。

粗悪語は、毎年一般から公募されていますが、その投稿数の多さを基準に選ばれているわけではありません。審査員が審査して選んでいます。2024年は、3172件の表現が寄せられ、その中には655種類の表現があったそうです。審査員はその内のおよそ80件が粗悪語の基準に合致していた、と述べています。

寄せられた表現の内、少なくとも10件以上あったものは、以下のものだそうです。

Unter den häufigsten Einsendungen (mindestens 10 Einsendungen) – nicht alle von ihnen entsprechen strikt den Kriterien der Jury – waren: Besonnenheit (50), biodeutsch (10), D-Day (22), Dubaischokolade (14), kriegstüchtig (58), Nutztier (1227), Remigration (23), Sondervermögen (20), Staatsräson (10), tatsächlich (24), Technologieoffenheit (38), Tierwohl (22), Tierwohllabel (14).
Quelle: Unwort des Jahres 2024 | unwortdesjahres.net

j.o.

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