花粉の飛散は新型コロナウイルス感染のリスクを増加させるだろうか?
Ob der Pollenflug das Infektionsrisiko erhöhen könnte?
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日本では、主に2月から4月まで、スギ花粉やヒノキ花粉が飛散することで、花粉症患者が増加します。ドイツ語では、古くはHeuschnupfen(英語の hay fever に対応)と言われていましたが、今では、花粉症に対して Pollenallergie (花粉アレルギー)という言葉が使われるようになりました。ただし、原因となる花粉 (Pollen) は地域によって異なります。
Pollenflugkalender | Allergie HEXAL によると、ドイツでは、2月から3月の間に飛散する花粉は、Erle(ハンノキ)とHasel(西洋ハシバミ)、3月から4月に飛ぶ花粉は、Esche(トネリコ)、Pappel(ポプラ)、Weide(ヤナギ)、Ulme(ニレ)、Birke(シラカバ)とのことです(このページでは、花粉飛散カレンダー(Pollenflugkalender) のPDF版をダウンロードできるようになっています)。Hasel(西洋ハシバミ)は、日本でもヘーゼルナッツで知られていますが、今の時期、ドイツでは「ヘーゼル」の花粉が飛び回っているのです。スギ(Zeder ⇒ 「ヒマラヤスギ」)やヒノキ(Zypresse: ⇒ 「イトスギ」)は、花粉症の原因にはなっていないようです。
さて、この数日、ドイツでは、花粉の飛散が新型コロナウイルス感染症を増加させているのではないか、という報道がされています。その根拠は、Higher airborne pollen concentrations correlated with increased SARS-CoV-2 infection rates, as evidenced from 31 countries across the globe | PNAS という専門誌 PNAS( March 23, 2021 118 (12) )に掲載された論文にあります。31か国から収集したデータで、高い花粉飛散量と新型コロナウイルス感染率の間に相関関係があることを裏づけるものです。
Der Spiegel (09.03.2021, 21.39 Uhr) には、Covid-19: Warum Pollen das Corona-Risiko steigern könnten – DER SPIEGELという記事があり、この論文を受けて書かれたものです。花粉が多くなると花粉症に苦しむ人が増える、というのは確かですが、ここでのタイトルは「なぜ花粉がコロナの危険性を高めるのか?」ということで、花粉が多く飛ぶと、花粉症にかかっているとかかかっていないとかにかかわらず、新型コロナウイルス感染症の患者が増える、という話です。
国際的なチームによって行われたこの研究は、ミュンヘン工科大学(TUM: Technische Universität München) とミュンヘン・ヘルムホルツ・センター(Helmholtz Zentrums München)が率いるチームが世界31か国のデータを集積して行われたそうです。2020年の花粉飛散に係るその地域の気象データや、コロナウィルス感染者数、感染症対策を考慮して相関関係を調べたものです。結論だけを大雑把にまとめると、気温と湿度を考慮した上で、花粉の飛散(Pollenflug)は、平均して、異なった地域における感染率における変異の44%を説明することができるようです。花粉が多く飛べば、新型コロナウイルス感染症の患者が増える可能性がある、というのです。
相関関係が本当に説得力のあるものなのかどうかには、いろいろな要素に依存します。単純な因果関係があるとは言えません。そもそもこの研究が行われたのは昨年の一時期ですし、感染するか否かは、人と人がどの程度近い距離にいるか、という要因の方が直接的に影響します。他に誰もいない庭で庭仕事をしていて花粉が飛んできても、それで新型コロナウイルスに感染するとは考えにくいというのも一理あります。
ただ、花粉はさまざまな物質を付着させて、人間の呼吸器に入り込みますので、危険性が高まることは十分考えることができます。その意味で、マスクはやはり重要です。日本では中国から来る黄砂にもさまざまな物質が付着していることが知られています。PM2.5しかり、マイクロプラスチックも同様です。ということで、いろいろなものがCOVID-19を運んでくるというのは、十分ありえる話のようです。
j.o.