犬飼 彩乃 (いぬかい あやの) 准教授
専門分野
現代ドイツ文学、フィクション論、翻訳論
現在取り組んでいる研究テーマ
現代オーストリア文学における多様化する自我とその言語行為
主要著書・論文
- 「書籍という知性の呪い:クレメンス・J・ゼッツのパラテクストの役割」東京都立大学人文科学研究科『人文学報』第520-14号、2024年、43-56頁。
- Gegen die Konvention des Textes. Shifts of Translation und die Übersetzung von Arno Schmidt ins Japanische. In: Jahrbuch der Gesellschaft der Arno-Schmidt-Leser 2019/2020, 2022, S.163-181.
- 「クレメンス・J・ゼッツ『ケーフェイと文学』からみるポスト真実時代の第四の壁」日本独文学会『ドイツ文学』第164号、2022年、161-176頁。
- 「作者のなかにいる作者 : クレメンス・J・ゼッツ『ボット : 作者不在のインタビュー』におけるテクストの主体」東京都立大学人文科学研究科『人文学報』第515-14号、2019年、113-130頁。
- Lügende Figuren. Überlegungen zum Verhältnis von Fakten und Fiktion im Roman “Indigo” von Clemens J. Setz und dem frühen Wittgenstein. 日本オーストリア文学会『オーストリア文学』第34巻、2018年、12-23頁。
- Clemens J. Setz und seine Grenzen der Sprache. 東京都立大学人文科学研究科『人文学報』第513-14号、2017年、101-111頁。
参考書・教科書・翻訳など
- (翻訳)クレメンス・J・ゼッツ著『インディゴ』国書刊行会、2021年、全568頁。
- (共訳)アフマド・マンスール著『アラー世代 : イスラム過激派から若者たちを取り戻すために』高本教之・由比俊行・早川文人・平井敏雄・荻原耕平と共訳、晶文社、2016年、全336頁。
- (共訳)ライナー・エアリンガー著『なぜウソをついちゃいけないの? ゴットフリートおじさんの倫理教室』高本教之と共訳、KKベストセラーズ、2006年、全285頁。
所属学会
日本独文学会、日本オーストリア文学会、日本翻訳通訳学会
近年の主要講義・演習
- ドイツ文学演習(大学院):人工言語を作った人々
- 文学・文化コース ゼミナール:翻訳を読むということ
- アカデミック・スキルズ入門
- 現代地域事情入門ゼミナール
- ドイツ語コミュニケーション
文学部で/私のゼミで学ぶ人たちへ
30年後、50年後にみなさんはどのような生活をしていると思いますか? この目まぐるしい変化の中で未来を予測することは困難ですが、人間は社会的な動物といわれますから、おそらく他者とのコミュニケーションは形式が変化したとしてもなくならないでしょう。ただコミュニケーションの相手は今よりずっと多様になるでしょうし、もしかしたら動物や宇宙人と交渉しなければならない日がくるかもしれませんね。では、文化も考え方も、場合によっては身体の構造でさえまったく異なる存在を理解し尊重しながら、自分のことも相手に知ってもらうにはどうしたらよいのでしょう。
すくなくとも現在までは、私たちの知的な営みの多くは言語を介して行われてきました。その言語がどのように発達して私たちの思考を反映してきたか、言語での伝達にはどのような特徴があるのかなど、言語そのものについて考えてみることは、これから様々なコミュニケーションの経験を積んでいく上で役に立ちます。さらに母国語とは別の言語を比較すると、それぞれの言語や言語によって形成されてきた文化の特徴をより鮮明に観察することも可能です。
たとえば私が注目しているのは、文化と文化の衝突の場といわれる翻訳や、小説などの言語表現を中心とした事実と虚構の境界です。ドイツ語は人間の言葉ですから、そこまで難しくはありません。他者とのコミュニケーションの練習に、まずは人間同士での相互理解の方法をいっしょに考えてみましょう。